2009年4月7日火曜日

結婚式にて(2)

友人Nの披露宴で、おれはついにケンジおじさんに出会った。

ケンジおじさんは、新郎=Nのお父さんの弟にあたり、おれの父さんの友人でもあった。

Nが転校してきたのは小学校高学年の頃で、その時父にケンジおじさんのことを聞かされた。
以来、存在は知っていたものの、何せ住んでる場所が違えば年齢も随分違う。
これまで会う機会など一度もなかった。

ただ、一度話してみたいとは思っていた。
どうやらそれは向こうも同じだったようで、披露宴のあと、おれたちは少しの時間会話した。

『父とはお友達だったんですよね』
「友達どころか、親友やで」

そう即答できるのはすごい。

ケンジおじさんは父と過ごした少年時代の話を聞かせてくれた。

よく、早朝の電車に乗って、釣りに出かけたらしい。
父の父さん=おれの爺ちゃん(おれが生まれる前に亡くなってしまったが)に連れられて。

他にも、中学や高校時代の話も聞かせてくれた。

「うちの兄さん(Nの父さん)と、キッタン(父のアダ名)の兄さんも、同級生やったんやで」
父の兄さん…若くして亡くなったノブオおじさんのことだ。

しかしこの話は初耳だ。
そっちにもつながりがあったなんて。

「すごい勉強ができる人やったんやで」
『そう聞いてます』
「キッタンもようできたけどな」『そうだったんですか?』

これも初耳だった。

父から聞いた父の少年時代は、やれ「中学の卓球部で空気椅子する後輩の太股を渡り歩いた」だの「高校でソリコミを入れた」だの、ろくでもないものばかりだったからなあ。
残ってる写真も、具志堅さんみたいな髪型だったし。
それでもケンジおじさんとの釣りの話は欠かしたことがなかったが。

「すごいですね。こんな繋がりがったなんて」

そばで一緒に話を聞いていた妹ちゃんが言った。
まったくそのとおりだよ。おれも初めて聞かされたときは驚いた。

ケンジおじさんは他にもいろいろ話してくれた。
その会話の中で、おれは父の人生の一端に触れたような気がして、なんだか少し不思議な気持ちがした。

最後にケンジおじさんは、息子さんがゲーム業界で働いていると教えてくれた。
今はフリーのシナリオライターとして、企業の下請けなどをしているらしい。

なるほど。
この話はまだ続いていくのかもしれない。

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